災害現場における遠隔臨場システムの活用方法と導入事例

遠隔臨場システムは工事現場以外にも活用できると聞いたが?

はい、例えば災害現場での人命救助に活用可能です。すでに総務省消防局などでも、減災対策として遠隔臨場システムを導入しています。
災害現場における遠隔臨場システムの活用例
火災現場における消火状況の把握と迅速・的確な指示
火災現場に立ち入って消火・救助活動を行う消防士にウエラブルカメラを装備させれば、現場内での消火・救助状況の把握、および迅速・的確な指示につながります。
従来、火災現場の状況を把握するには、現場内に立ち入った消防士からの口頭伝達に頼るしかありませんでした。過酷さを極める火災現場からの口頭伝達では、時に誤解を招いたり余分に時間がかかったりすることがあります。
ウエラブルカメラを利用した遠隔臨場システムが、従来の口頭伝達による課題の解消に貢献します。
各種の災害救助現場における状況の正確な把握
救急救命士の活動が求められる各種の災害救助現場において、救急救命士にウェアラブルカメラを装備させることで、遠隔から救助現場の状況を正確に把握することが可能。モニターから救助対象者の状況を観察した医師が救急救命士に対して迅速な指示を出したり、モニターを通じて得られた周辺の状況から災害専門家が的確な避難方法の指示を出したりすることができます。
災害救助犬からの映像による狭隘空間の状況把握
救助隊がスムーズには立ち入れない狭隘空間において、災害救助犬にウエラブルカメラを装備させれば、傷病者の匂いを感知した救助犬が吠えた場所の状況を遠隔から確認することが可能。モニターを見た医師が傷病者の重症度や緊急度を判断し、適切な救助活動へつなげることができます。
ドローンからの映像による災害状況の俯瞰と適切な避難方法の判断
地震や土砂崩れ、台風などの災害が発生した場所へカメラを搭載したドローンを飛ばせば、上空から災害状況を広範囲で俯瞰することができます。
遠隔からモニターを通じて災害専門家が現場の状況を確認することで、取り残された現地住民の適切な避難方法の検討、立ち入り制限が必要な場所の判断などに役立てられるでしょう。
災害現場における遠隔臨場システムの活用事例
総務省消防局における活用事例
課題
近年、日本列島では台風や低気圧による豪雨、土砂災害、噴火など、甚大な自然災害の発生頻度が増加しています。特に災害が広域にわたった場合、災害が発生している現場の特定に時間がかかったり、消防隊員が到着するまで現場の状況が分からなかったりなど課題が山積。隊員が現場に到着しても情報伝達は無線による音声が主だったため、災害の全体像を正確に把握するには多くの時間を要するのが実情でした。
対策
東京都をはじめ、全国20の政令指定都市の消防本部に、公衆モバイル回線を利用した遠隔臨場システムを設置(2020年4月1日)。災害発生時における電話の不安定な環境でも、安定的に現場の高画質映像をライブ中継できる仕組みを構築しました。
期待される効果
広域災害が発生した際、システムが連携しているどの場所からでも現場の状況を画像で確認でき、かつ通話による情報伝達もスムーズになるため、以前に比べて正確な状況把握と迅速・的確な現場対応が期待できるでしょう。
鹿児島県危機管理局危機管理防災課における活用事例
課題
離島を含め非常に長い海岸線を持つ鹿児島県。その長い海岸線ゆえ、太夫や熱帯性低気圧が接近・上陸した際には甚大な被害が生じることも少なくありません。また、南北に11もの活火山が分布していること、多くの市町村が周囲を山に囲まれていることなど、自然災害のリスクが高いエリアであることを踏まえ、災害発生時の被害を低減させるために何らかの対策が必要とされていました。
対策
GPSによる地図情報との連携機能を持つ遠隔臨場システムを導入。通信事業者の回線を利用したインターネット通信で、災害現場の迅速なライブ映像を確認できるシステムを構築しました。
期待される効果
風水害、火山被害、地震・津波被害、原子力災害など、多くの潜在的リスクを抱える鹿児島県。遠隔臨場システムの導入により、災害発生時における県民の生命・財産に対する被害の低減を目指します。
静岡県熱海市で発生した土石流の救助活動における活用事例
課題
2021年に静岡県熱海市で発生した土石流は、海まで2㎞にも及ぶ広範囲の被災地で、自衛隊、警察、消防など合わせて1,000人規模での救助活動が行われましたが、被災地の空は夜になっても晴れることはなく、断続的に雨が降り続けるため、リアルタイムな状況判断が困難な中、土砂災害が起こる可能性もあり作業を中断せざるを得ない状況が続いていました。
対策
広範囲の被災地を調査するために、静岡県知事から要請を受けた陸上自衛隊第34普通科連隊(板妻駐屯地)のファストフォース(初動部隊)隊員約30人が、モバイル回線を利用して高画質の動画をライブ中継するカメラ「Smart-telecaster」を付けて被災地の状況をくまなく調査し、主要な場所の映像を伝達していました。
期待される効果
リアルタイムな状況を被災地から伝送することができるため、判断・支持が口頭伝達よりも迅速に行えます。Smart-telecasterのマルチリンク機能によって複数個所に設営しているすべての後続部隊にも、高精細な4K映像で被災地の正確な状況を伝達する効果が期待できます。

災害現場に遠隔臨場システムを活用するという発想は、まさに灯台下暗しだったかもしれないな。現場の状況がリアルタイム映像で分かれば、減災にも大いに役立つのではないだろうか。

確かに役立ちますが、1つだけ注意点があります。それが画質と通信性です。災害現場では一刻を争う状況が予想されるので、画質が不鮮明だったり通信が安定しなかったりすれば、かえって判断を鈍らせるかもしれません。人の命に関わる大事なシステムなので、価格や手軽さを重視するのではなく、まずは画質と通信性が優れたシステムを選ぶ必要があります。

なるほど。しかし、画質と通信性がともに優れたシステムなど存在するのか?

私が調べた限り、ある企業の製品がそれに該当しました。ソリトンシステムズの遠隔臨場システムです。
ソリトンシステムズの遠隔臨場システム
Zao-X
オリジナルの映像伝送プロトコルとH.265/HEVCの組み合わせにより、高画質での動画送電が可能。通信ユニットは複数キャリア(4回線)のSIMに対応しているため、あらゆる環境下での通信対応可能性が高まります。ドローンや360度カメラとの連携も可能なので、災害発生現場の俯瞰にも活用できます。
Zaoウェアラブル



Wi-Fi接続が可能であることに加えて4G/LTEのSIMを内蔵しているため、迅速なスタンバイが可能。H.265コーデックと独自映像伝送プロトコルRASCOWの組み合わせにより、安定した動画送電が実現します。様々な現場での使用を想定し、防磁防水やナイトモードなどの機能も搭載しています。
Zao App

引用元:フォーラムエイト(https://www.forum8.co.jp/topic/IT-terms123.htm)
iPhoneのカメラや音声機能を通じ、H.265の高品質なライブ中継ができるアプリ。App Storeからアプリをインストールするだけですぐに利用できるため、急に遠隔臨場システムが必要になった場合でも、迅速に立ち上げることが可能です。クラウドサービスの「Zao Cloud View」に接続すれば、他拠点との通信も可能。GPS測位情報と連携させ、位置情報を可視化することもできます。
